はじめて陶器の食器をご使用になられる方で、「どう扱ったらいいのか不安」といったお声も多いので、今回は、扱う上で知っておいていただきたい陶器の特徴についてご紹介します。
ー磁器とは違う、陶器の特徴ー
まず、焼物は大きく分けて「磁器」と「陶器」の二つに分類されます。見た目で区別すると、「磁器」は白くて厚みが薄く、ツヤツヤとした光沢のあるうつわで、「陶器」はぼってりとした厚みで、ザラザラとした土らしい手触りの感じるうつわ、と言えます。見た目とは別に、実はもう一つ大きな違いがあります。それは、うつわの吸水性です。磁器は吸水性がないのに対して、陶器は吸水性があります。陶器の主成分は、陶土と呼ばれる粘土であるのに対し、磁器は石が最も多く含まれています。陶器の焼成温度は 1200~1300 度で、磁器は 1300 度以上の高温で焼き上げます。磁器は、高温に晒されると、石が溶けてガラス質になり吸水性が無くなります。一方の陶器は、粘土の中に石は含まれますが、その量が少ないため全体がガラス質にはならず、多孔質な素材になります。
ー陶器は呼吸をしている?ー
多孔質とは、肉眼では見えないような小さな穴がたくさん開いている材質のことです。陶製の容器に飲み物を入れると、口当たりがまろやかになったり、陶器にビールを注ぐと泡がきめ細かくなったりします。それらは全て、陶器の持つ多孔質な性質が関係しています。一見すると無機質で硬い陶器ですが、実は多孔質な性質を利用してひっそりと呼吸をしているようにも思えてきます。
ー長く使うために注意したい「吸水性」ー
陶器のうつわは、使用を始めるとどうしても経年の使用感が出てきます。それは、多孔質な隙間にスポンジが水を吸い込むように汚れや色素が入り込んでしまうためです。特に釉薬の掛かっていない素地の部分は、そうした特徴が表れやすい場所です。弊社の食器類は、汚れの付着を軽減するための加工を施していますが、陶器の性質上、完全に防ぐことはできません。もし汚れが気になった場合は、酵素系漂白剤などでつけ洗いをしていただくと汚れが落ちることもあります。しかし、陶器の多孔質な穴の形状は様々ですので、汚れが内側に入ると取れない場合が多いです。
ー土とガラス質の釉薬の収縮率の差で生まれる貫入ー
多孔質な穴に汚れが入る他に、貫入という陶器の表面にできた溝に汚れが入る場合もあります。貫入とは、焼き上がった陶器を窯から出して、冷ましている過程で生まれるヒビのような模様のことをいいます。もう少し詳しく説明すると、陶器本体の素地と釉薬の収縮度の違いによって、釉薬がヒビのような状態になって固まる現象です。基本的に釉薬の方が大きく縮むため、釉薬の表面に貫入が入ります。
ー使用中にできることー
陶器に汚れを付きにくくする方法もあります。例えば、カレーなどの色の付きやすい食べ物の場合は、盛り付ける前に一度水にくぐらして下さい。水にくぐらせることで、多孔質な陶器の隙間に水が浸透し、表面に膜をつくり、汚れなどの付着を緩和する効果があります。また、ご使用後は長時間放置せずに、なるべく早く洗っていただくことをお勧めします。
ー洗浄後はしっかり乾燥させるー
陶器は乾燥も非常に大切です。洗浄後、見た目は乾燥しているように見えるうつわも、じつは中の方が吸水して湿ったままの場合もあるので、そのまま食器棚の中など換気の悪い場所に置いておくと、カビや黒ずみが付着することもあります。特に梅雨時期などのじめっとした季節は、長時間のつけ置き洗いはしない、しっかり乾燥させる時間をとるなどのご注意を払っていただくことも大切です。
ー陶器の風合いを大切にー
土物である「陶器」は、人の力ではコントロールのしにくい素材です。作る際も使う際も、思うように扱えないことがあります。しかしその分、素材としての面白みがあり、土そのものの質感や手触りは私たちに驚きや喜びを与えてくれます。少し手間のかかる素材ですが、自然のものならではの魅力と捉えて、経年変化もお楽しみいただけると幸いです。